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abさんご〈受像者〉 [abさんご]

「abさんご」〈受像者〉 あらすじ

 幼い頃住んでいた町の、
 二つあった小学校のどちらへ私は入学するのと、
 主人公は親やお手伝いさんへ無邪気に尋ねたものの、
 結局、戦時、親の都合で町を離れたので、
 思いがけず別の人生を歩むことになってしまう。
 それから50年が過ぎ老人となった主人公は、
 その歳になってようやく、
 ついに選ばれること無く消えたはずの、
 珊瑚のように枝分かれしたかつての道々の、
 そのすべてを受け入れる準備ができたと感じた。
 そしてやっと穏やかな目覚めを味わえるようになる。
 部屋の外では小鳥たちがさえずっている。

 この頃見始めた明け方の夢には、
 生前の両親と幼い頃の自分がたち現れては、
 遠い想い出のなかで埋もれていた、
 古い家での暮らしぶりや幼い頃の望みが形となる。
 現在の主人公の暮らしぶりは、
 孤独のようだが決して不幸ではなく、
 夜ごと夢の出会いを楽しみに眠りにつく。

 --つづきを読む--

(この章にでてくる言い回し)
野生の小禽 → 野生の小鳥(野禽)
帰着 → 夢からさめた今の暮らし
多肉果の紅いらせん状の皮 → りんごを剥いた皮

・コラム:やわらかい檻のせつなさ!


・この人いったい幾つなの?How old are they?
・これは誰なんですか?呼び名七変化~主人公の父編主人公編家事係編
タグ:あらすじ
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大貫拓朗

お初にお目に掛かります。
以下のように、私なりに纏めてみました。

1.受像者
aかbか小学校を選ばなくてはならなかった、という回想。が、その土地を離れたので、どちらの学校にも入学することは無かった。片親を早くに亡くし、もう片親も亡くなった。受像=夢を見ること。

2.しるべ
片親が亡くなった後の盆の思い出。盆提灯を飾って死者を悼んでいたが、十年ほど経つと、それらも傷み、しまわれたままになった。
しるべ=盆提灯

3.窓の木
住まいの思い出。かなり裕福な生活を送っていたことが覗える。
三階建ての住居に親と住んだが、二階が書庫/書斎だった。その書斎で朝食を摂ることもあった。窓越しに木が見えていた。(恐らくは戦時中で物質的な窮乏があったが)物置には穀類が貯蔵され、親子とすぐ近くの料理屋の食料庫を兼ねていた。
疎開先は海辺の小さな家だったが、戦火を免れ、書物は無事だった。
戦争が終わり、月日が流れた。書庫用の別棟が建てられていたが、とても不便だった。かといって改築を援助するような資力は主人公には無かった。
先に死んだのは母だろうと推測出来る。後妻=義理の母は、本や書架に対する思い入れは全くないらしい。

4.最初の晩餐
母が亡くなったので家政婦を雇った。父・娘・家政婦三人の食卓はぎこちない感じがした。前に住んでいた大きい家なら家政婦も遠慮したであろう。父五十三歳、娘十五歳にして、親子の関係も大きく変わろうとしていた。

5.解釈
娘十七歳。心ない家政婦のために、家の庭は荒れ放題になっていた。その庭で家政婦と出くわす。もう出て行こうとしていたところだと。それを見られたのだから、これも運命じゃないかと家政婦が「解釈」し、結局居座ることとなってしまう。もうここは仮の住まいじゃ無くて永の住まいなのであることを認めざるを得ない。

6.予習
父が海外出張で家を空けることがしばしば。二十九歳の家政婦は父に恋をし、また父の方でも満更では無いらしい。この家では父と家政婦が大人なのであり、主人公は家政婦から子どもと見做されている。
予習=孤児になるという想定

7.やわらかい檻
夏、父と蚊帳に入るのが楽しみだったが、家政婦にとってはたまらない。虫を燻し出してしまいましょうと提案し、蚊帳は吊されなくなる。
やわらかい檻=蚊帳

8.旅支度
(恐らくは大学卒業を機に)家を出ようと主人公は考えている。行李の配送を頼んであったが予定より早く着き、代金は父が既に支払っていた。家政婦がお金のことまで管理するようになったので、父から娘へプレゼントすら出来なくなっていたのだ。主人公は幼い頃父から買い与えられた玩具のことを思い出す。

9.満月たち
子どもの頃の思い出。戦争で窮乏していたため、周りの子達は貼り絵用の紙を用意することも困難だった。恵まれた主人公が学校へ色紙を持って行くと、あっという間に他の子に奪われてしまった。残った灰色と白色で細工したが、思いの外上手くいった。日頃から大人相手に遊んでいたので高度な技術があったのだ。
その時作った六つの満月を十年後、さらに四十年後思い出す。

10.暗い買いもの
幼い頃、子供用の傘を買って貰ったが、とても選べなかった。雨をしのぐのは傘と家。父に「この家に住み続ける気はあるのか」と訊かれ戸惑った。
暗い買いもの=望まない選択

11.秋の靴
それから幾星霜。父の死期が迫っている。葬儀用に靴を買わねばならないが、経済的に逼迫している。家政婦は今や家の金銭管理を取り仕切っている。父の見舞いで遅くなると同棲している彼氏に電話しようとしたとき、父に小銭の音を聴かれたらしい。困窮しているのに気付かれたのだろうか。

12.草ごろし
家の近くはかなり道が荒れていたが、新興住宅地となり、綺麗に均された。自宅の荒れた庭は家政婦が除草剤で処理した。こうして思い出が壊されていくのである。

13.虹のゆくえ
子どもの頃、トカゲに親指を見られると親の死に目に会えないという迷信があった。最初の母の死に目に会った四歳の時の記憶が無い。かすかに覚えているのは、母が亡くなったとき、一人で食事をしたことと、火葬場に花が咲いていたこと。そして今、父が死を迎えている。

14.ねむらせうた
父は酸素吸入機や心電図モニターにつながれた状態である。楽になって欲しいと思うが、それは死を願うことである。私は死に神なのか?
自分自身好きに生きてきたが、幼い頃は親の庇護が必要なのだ。母親は早くに無くなり子守歌を歌って貰った記憶が無い。代わりに父が歌ってくれた。子守歌は我が子に明日が来ることを約束するものなのである。

15.こま
主人公=筆者もついに老境に達した。
この間に、家政婦が父の後添えになるという大きな事件もあったが、今思えばそれで良かったのではないだろうか。こと人間関係において大きな歪みが生じることも人生ではしばしば起きる。
本に囲まれた窮屈な家から幼い私を父はたびたび散歩に連れ出してくれた。それが私の、父の人生の最高の喜びだったのかも知れない。この上ない愛情表現だったのかも。
人生では、常にaかbかの選択が迫られる。どちらを買うか、どちらに住むか、結婚するかしないか…無数の道がある。それはあたかも、細かく枝分かれする珊瑚のようなものだ。どちらを選ぶか?それには正しいとか間違っているとかは無いのではないか。

以上です。最終章についてはかなり饒舌になりましたが、人生を肯定的に捉えているのだという受け取り方をしました。

こちらのブログ大変興味深く拝読しました。ありがとうございました。
by 大貫拓朗 (2014-08-01 23:46) 

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