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abさんご〈窓の木〉#3 [abさんご]

「abさんご」〈窓の木〉あらすじ

 それからずいぶん長い年月が経って、
 敷地の端には別棟の書庫が二つ造られていた。
 そしてあの粗末だった書庫も取り壊され、
 今はいくらか広い書斎に改築されてもいた。
 そうなると、屋外にある二棟の書庫は、
 いかにも不便で使い難いものとなり、
 今度はこちらを便利に建て直せばと思うのだが、
 老年となった父はもはやそれを面倒と感じていたし、
 成長し家を出て、はや10年となる主人公の生活は、
 哀しいほどに困窮していて、
 そのための改築資金など捻出できるはずもなく、
 結局は何も言えずに、ただ口ごもるだけだった。

 新しくなった書斎には棚が作り付けられたので、
 古い書架はもはや不必要となり、処分されていった。
 幼い日、その古い棚たちに囲まれて育った主人公にとって、
 それらはいつまでもあるのが当然のものだったから、
 亡き母の盆提灯が消えていったときと同じように、
 ついぞその数を数えることも無いままであった。
 その処分の際、晩年父の身内となる家政婦から、
 捨てるのは勿体ないから使わないかと聞かれたが、
 狭い部屋で独り惨めな暮らしぶりの主人公には、
 何ともしようがなく断るしか無かった。
 そして、そのやりとりを聞く父の侘しい心持ちを想うと、
 必死で隠してきた自身の困窮した暮らしぶりを、
 いっそ打ち明けようかとさえ心が痛んだ。

 幼い日の三階建ての家、
 父とふたり朝食を摂ったあの書斎の光さす窓を、
 折にふれ思い出し忘れるはずもなかったが、
 今となっては夢の中の書斎でしかないその部屋に、
 自分が父を迎え入れ、そうしてまた、
 あの窓越しに見えたあの時の木を植えようと言えたなら、
 それはどんなにうれしいことかと、
 主人公はひたすら夢想した。

 --もどって読む--
 --つづきを読む--

(この章にでてくる言い回し)
 読みながら感じたのは、
前の章〈しるべ〉での「提灯」が母の記憶なら、
この章〈窓の木〉の「書架」は父の記憶なのでしょう。
 そのどちらもが、気づいたときには、
もはや消え去る運命となっていて、
主人公の後悔と自責の念が痛かったです。

いくえにかねじれたこだわりはこだわられた → 


・あらすじを最初から読むなら!
・この人今はいくつなの?How old are they?
・これは誰なんですか?呼び名七変化~主人公の父編主人公編家事係編
タグ:あらすじ
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