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やわらかい檻のせつなさ! [abさんご]


へやのなかのへやのようなやわらかい檻

巷の書評などでも、真っ先に取り上げられたこのフレーズ!むろん50代以上の方には思い出深いあの「蚊帳」のこと。

傘を意味する「天からふるものをしのぐどうぐ」等と並べて、詩のようだ!、美しい!等々絶賛されています。

でも、どこか違和感のようなものありません?

私こと北角港湾城(きたつのこうわんじょう)は、実は「檻」にひっかかって「おり」ます(笑)

というのも、檻のイメージと言えばかなりネガティブで、その意味するところは、猛獣や罪人が逃げないように入れておく囲いですよね?

さすれば(笑)物語の親子の罪ってなに?

その上、普通は頑丈な(鉄格子とか)はずのものが、この場合は「やわらかい」となれば、いくらでも好きなように逃げ出せてしまうのに。

ところが、二人だけとなるその空間を、家事係が嫌悪して捨てるまで、親子は好んでその中に入ってじゃれてるわけです(笑)

もっとも蚊帳ですから、刺されないよう逃げ込むべき場所は場所なんですが(笑)

そして、それはなんと11年間も続けられています。

住み込んで最初の夏、それを目撃した家事係が二年目に取った廃棄処置は、たとえ嫉妬からだとしても英断かもしれません(笑)

問題は、檻の暗示するところが、この親子を守る場所(逃げ込める)のイメージの最終形だったのではなかろうかと。まあ、最後の砦(笑)のような?

でも、その砦が頑丈さの欠片もない場所にもかかわらず、もう親子にとってはそこしか安心できる場は無いんだという半ばあきらめの象徴でもあったなら。ものの哀れを感じさせます。盛者ひっすいの理をあらわされます(笑)

そしてその場所は、たいそう立派だった三そう目まである屋敷をスタートに海辺の小いえへ、そして遂には寝床二つ分の蚊帳にまでシュリンクし、その時々のその場所で(二そう目での朝食親子ふたりの食卓等々)、親子は守られるべきものを徐々に奪い取られてしまいます。

檻として暗示された蚊帳の、息を止める役回りが家事係だったわけですが、やっぱりこれを最後に親子関係(父と娘)は終わっちゃったんでしょうねえ。

母の死も戦争も受け入れた父と娘の絆というか、ある種の独特な関係性(知的上流階級の精神的愛戯)も、さすがの家事係には勝てなかったというこの結末。お話としてはありふれたものですが読ませます。

物語冒頭の〈受像者〉で語られた、家事係さえいなければ続いたかも知れないという、ここが別の未来への岐路(abさんご)だったんでしょう。

以下本文〈受像者〉より引用〜
そこで片親とひとり子とが静かに並んでいた. いなくなるはずの者がいなくなって, 親と子はとうぜんもどるはずのじょうたいにもどり, さてそれぞれの机でそれぞれの読み書きをつづけるまえのつかのま、だまって充ちたりて夕映えに染みいられていた. そういう二十ねん三十ねんがあってふしぎはなかったのだが, いなくなるはずの者がいなくなることのとうとうないまま、親は死に、(略)



abさんごのあらすじを読む
・資料館:How old are they?
・資料館:呼び名七変化~主人公の父編主人公編家事係編
・コラム:父の形見
・コラム:abさんごの謎〜父と子の年齢差は?〜
・コラム:abさんごの謎〜家事係はなぜ家を出ようとしたのか?〜
・コラム:abさんご〈受像者〉とジェネシス〈月影の騎士〉の夢
・コラム:ことばでとらえたいものをとらえたい
・コラム:abさんごのタイトルの意味とは?


父と娘の肖像〔文庫版〕 (小学館文庫)


タグ:コラム
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